社長になると、会社のお金をかなり自由に使える立場になります。しかし、この特権がアトツギの足元をすくうリスクになる。今回は、私の失敗談も交えて、お金の使い方に関するお話を紹介させて頂きます。
まず、社長になって気を付けたい事は、生きたお金の使い方をできているかどうか?
多くのアトツギは、業績を成長軌道に乗せるため新規事業に挑みます。
それ自体は、悪い事ではないのですが、筋の悪い新規事業に手を出すと、経済的な損失だけではなく、社員のモチベーションを落とし、組織的なダメージも生じるリスクがある。
それを分からないアトツギは結構います。
私の失敗談
社長になる前の話ですが、私自身も過去に大きな事業の失敗経験があります。
自分のやりたい事をそのまま実行してしまい、会社の価値向上に全く結びつかない事業を始め失敗しました。この時は、自分では「まともな事をやっている」と思う反面「本当に、これやり切れるのか?」という気持ちも、心の底では感じていましたが「絶対に上手くいく」という自己暗示をかけて、突き進みました。結果、見事に失敗し、当該事業に関わっていた一部の社員も退社する事態になりました。これは、大きな反省であり、二度とこういう事をやっていはいけないと反省しました。
もともと、金属加工業の会社であったにもかかわらず、金属加工とは全く関係のない分野で会社の資源を生かせる分野でもなく、私の興味があるインテリア雑貨関連の事業でした。今の自分なら絶対にこんな投資はやらないと思いますが、当時はまだ年齢も若く、できるだろうと甘く考えていました。自分たちでデザイナーを探し出し、商品を企画し、実験を重ねて商品を作り上げていきました。実験では、自社の強みを生かせる側面はありましたが、商売の最終的な出口での本業へのプラス効果のシナリオがダメでした。自分では、シナジーを齎すという算段で考えていましたが、間接的過ぎて生きた投資にはならなかったのです。
しかし、商品をいざ制作して展示会などに出展したところ、業界内から大変な反響があり全く無名の雑貨ブランドでありながら大手百貨店、有名インテリアショップから取引のオファーがあり、1年もたたずに北海道から九州まで販路が広がりました。業界内ではありえない偉業と称えられ、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など様々なメディアに掲載され有名になりました。またコラボ商品の企画もあり、ムーミン、Jaxaといった有名どころから話が持ち込まれ、実際にコラボ商品を製作して販売しました。売り上げも、そこそこ上がり、展示会後にはパリをはじめ、世界の都市にあるインテリアショップから取引希望の話が持ち込まれました。正直、「してやったり」という気分でいましたが、本業とは全く関係ないので社員の日常に変化があるわけでもなく、どこか冷めた目で見られていたことは覚えています。
そんな状況も半年過ぎるころには一変します。インテリアショップからは、次の商品を望む要望が山のように寄せられ、なれない商品企画を続けましたが、専門家でもないためネタ切れになります。そして最後は売れ残った在庫が山となり万事休すとなります。
事業の後始末は、かなり大変でした。
この経験で学んだことは「会社の付加価値を高める事業以外は手を出すな」という事でした。どれだけ自分が楽しくても、会社の価値向上につながらない事業に手を出してはいけない。会社の経営資源を活用できない事業はやっちゃダメ。重要な教訓でした。
これが、当時、開発した商品の一部です。商品としては、今でも素晴らしい商品だと思います。本当に素敵なデザインで、特に若い女性には人気がありました。
アトツギが注意すべき事?
まず、社長になってから、いきなりお金を使わない事です。
例えば、自分専用の高級社用車を買う、自室のインテリアを充実させる。オフィスをきれいにする。ホームページを変える、会社の社名やロゴを変える。(私はやってません。。。)
これ、全て会社の付加価値向上には、全く直結しない投資です。
社員の使うスペースをきれいにする事も同様です。社員には受けが良いかもしれませんが、会社の価値向上にはつながりません。新規事業も同じです。
私の場合は、社長になる前に前途のような失敗を経験していますので、新規事業をいきなり始める事はしませんでしたが、最近はアトツギベンチャーみたいな感じで新規事業をテーマにビジネスを展開する人たちも多く、筋が良い新規事業であれば問題ないのですが、世代交代直後の中小企業でいきなり新規事業を始めることは非常にリスキーな事です。
お金の面だけでなく、社員のモチベーションに関わる面があるからです。社長の独りよがりプロジェクトになってしまっては全く意味がありません。
私なら、こうする
まず、できる限り社長としての力量が身に付くまでお金を使いません。実際に私はそうやって業績を伸ばしてきました。実際にやった事と重なりますが、以下のようになります。
お金を使うのではなく、無駄な事をやめることから始める(=無駄な出費を止める)
生産性と採算性を高めた上で、余ったお金は社員に還元する
新規事業については、付加価値を高めるものを選択し製品・事業開発に投資する
製造設備に関しては、生産性と品質向上につながる投資であればシュミレーションして早めに投資する
先代が残していった借金をとにかく返す、利息を減らす
派手さは一切ありません。社員から見ても、何も変わらないと見えるとい思います。でも、これでいいのです。最初は。経営の型ができるまでは、たとえ潤沢に資金を持っている会社であっても、お金を使ってはいけない。なぜなら、アトツギは、生きたお金の使い方を直ぐには分からないからです。
一方で、失敗を経験してみないと学べないという側面もあるのでバランスが難しいところですが、最初は「会社の価値向上」に直結しているかで判断するようにしてください。お金は気を許すと一気になくなるものです。
まとめ
その投資、企業価値向上に直結してますか?
これを常に自分へ問いかけ、あ資の判断を行ってください。
そうすれば、大きな失敗を経験する確率が下がるはずです。
終わり
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