私のブログを読まれてる方は、経営者だったり管理職の方が多かったりします。部下、社員のパフォーマンスをいかに高めるか考え試行錯誤している。今回は、コンサルティング現場での具体的な事例を交えながらインセンティブ制度について解説していきます。
お客様での事例
お客様からインセンティブ制度に関する相談がありました。現場で起きている問題として、営業マンはインセンティブを1円でも高く得たいがために、顧客に提供する価値を顧みずインセンティブが高くなるような売り方に注力している。
営業部門だけを見れば、原価に十分な利益を載せて販売しているので確かに利益は見込まれる。しかし、モノを売るという行為は営業だけで完結するものではなく、営業を支える裏方が存在する。更には、受注した仕事を消化していく後工程の社員も存在する。後工程を担うスタッフのキャパシティ、負荷状況を鑑みずに受注を先行してしまうとどのような事が起こるでしょう?
顧客は、納品までのスケジュールが一向に決まらず延々と待たされることになる。代替手段がないモノであれば、お客様は待ってくれるかもしれないが、代替手段があるモノであった場合、気長に待ってくれる顧客ばかりとは限らない。更に問題となるのは、待っている間に競合他社へ問合せし、より安価な見積もりが出てくるとも限らない。
さて、ここまで読んだあなたは何に気づきましたか?この先、この企業にどのようなリスクが生じる可能性があると予測できましたか?
何が起きるか?
インセンティブが支払われる対象職種が、営業マンだけだったらどうでしょうか?当然ながら、バックエンドや後工程で頑張って仕事している人たちは面白くないですよね。
「なんで、営業だけお金貰えるのか?」・・・必ずこうなる。
ここまでは、誰でも想像つく話です。営業職以外は、モチベーション下がりますよね。
最も怖いことは「顧客の信用を失うこと」です。価格面、納期、いずれも不透明であり、売り方は営業マンが個人的な利得となるインセンティブを稼ぐためにモノを売っているような状態になり「顧客への価値提供」という視点がスッポリ抜けてしまっている。
更に、バックエンド、後工程の人たちもモチベーションが下がり、徐々に仕事の質も落ちていき、顧客からの信用が欠損し続けるという負のループにはまり込んでしまう。
これが最も恐れるべきリスクです。
インセンティブ制度って、使い方を間違えると本当に怖いなと思う瞬間です。
なぜ?インセンティブが必要なんでしょう?
ここまでの話を聞いて、私は顧客に問いかけます。
”社長、なぜインセンティブを支給するのですか?、目的は何ですか?”
”本質的な目的って何だと思いますか?”
もちろん、インセンティブの目的には会社の業績を高める、頑張った社員に報いるというこの2点は大きいと思います。ですが、忘れてはいけない重要な視点が他にあります。
会社本来の目的は、顧客に価値を提供し続け、信頼を得続け、適正な対価を得ること。そして会社として存続し続けることです。
そのためには「社員同士が協力しあう社風」が絶対に必要だと思いませんか?
私からは、このようなアドバイスを行いました。問題はインセンティブ制度の不具合ではなく、社員同士が協力しあう状態になっていない事が問題の根っこであると。
インセンティブ制度の究極の目的は「社員同士が協力しあい、顧客に高い価値を提供することを助長する仕組み」ではありませんか?と、私はお客様に問いかけました。
インセンティブ制度を整備する前にやるべき事
これ、とっても重要です。
社長であるアナタが、この会社を私はこんな風にしていきたい!つまり、あるべき姿や共有すべき価値観などをシンプルな言葉で表現し、繰り返し繰り返し社員に刷り込むことです。経営理念だったり、ビジョンというものなのかもしれません。
インセンティブ制度だけでなく、社内の制度を新たに設計する場合、この根源的なものに照らし合わせて、新設する制度が、その根源的な価値観などに沿っているかどうか確認する必要があるのではないかと私は考えます。ということで、私のお客様のケースでは、より根源的なところから再構築し、高いレベルから仕組みを変えていく事を目指すことにしました。
おそらく、今回のようなケースでインセンティブ制度だけをどれだけ修正しても、社内で社員が協力し合う社風というものは作れない。根本的な問題解決にならないのです。
なので、根源的な価値観のインターナルマーケティングから着手することとなります。
さて、皆さんの会社、組織ではどうでしょうか?
インセンティブ制度が、会社として組織として目指す根源的な価値観に沿った仕組みになっていますか?
もし、今、インセンティブ制度が上手く機能していない、、、という悩みを抱えておられるようであれば、この辺をチェックしてみてください。人は、ただ単位にご褒美としての「お金」を渡すだけでは経営者が思うようなパフォーマンスを上げてくれることはないのです。
共有する究極の価値観があって、それに沿った仕組みである必要があり、その価値観に沿った仕事のやり方でなければ、社員のモチベーションは高まらず、パフォーマンスも上がらないのではないでしょうか?
以上
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