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執筆者の写真Takeshi Sekine

「こころ揺さぶる人」

サラリーマン時代の上司にも、理屈ではなく部下の心を動かす上司の存在はありました。

人間関係が希薄になりがちな時代だからこそ、一緒に働く仲間との心の結びつきは重要です。今回は経営者として大勢の仲間を動かす手法についてのお話。



パワハラが横行する理由

90年代以降、パワハラという言葉を耳にするようになりましたが、幸いにして私はパワハラという行為を受けたことは殆どありません。自分の性格にも因ると思いますが、何か理不尽な体験をしたとしても、こっちにも付け入られる隙があったよなと思う事はありました。


なぜ、パワハラを働く上司が増えているのか?

(日本においてという事を前提条件として以下、読み進めてください)


私の個人的な見解ですが、上司側のマネジメント能力が落ちてきているからではないかと思うのと、受けたと騒ぐ側も同様に危機を自力で突破する、あるいは危機を招かないようなリスクヘッジ能力が落ちてきているのではないかと思うのです。


上司となる世代は、世の中が豊かになり経済的な不遇を経験することなく、両親に可愛がられ(=甘やかされ)、危ない目に遭わないように守られながら育った世代になってきています。つまり、自分の思い通りに事が運ぶ環境がある程度整った人生を歩んでいる人が多いのではないかと。


反対に、若い社員の世代も同じです。少子化が進み、一人っ子で育った人の比率も上がってきています。そうなると、余計に自分の思い通りに何でもできてしまう環境の中で育ってきているはずです。


つまり、危機に直面し、自力で乗り越える経験が双方、乏しくなってきているのではないかと思うのです。その仮定が正しいとすれば、当然ながら危機に面した時、自分が持っている危機対処方法のパターンが少ないため、稚拙な方法で無理やり乗り切ろうとする。

一番簡単な方法は、普段から脅威となりそうな相手や、自分の意図したように動かない相手を攻撃して排除してしまうというパターンです。


親も含めて自分以外の人間と、心と心をぶつけ合って争ったり、助け合うという経験が乏しいからパワハラって起きるんじゃないかなと思うのです。


大体のケースにおいて、パワハラやっている本人は、心のどこかでは自分の力不足を感じているはずなんですが、それを正面から受け止めて自分を変えよう、もっと努力して成長しようという発想がないから、防御となるパワハラをやってしまう。そんな気がしています。


つまり、管理職の世代も部下の世代も、他責の念が強くなってきているからパワハラって起きるんだろうと思います。




じゃあ、なぜ、他責の念が強くなったのか?

傷つくことに慣れていない、自分の弱点、弱みを正面から受け止める勇気がない。

ってことなんじゃないかと思います。「かっこ悪いところをさらす勇気がない?」

って事かと。だから、外に責任転嫁するしかないんでしょうね。


そういう人は、やたらと承認欲求が高く、上手くいっている人と自分を見比べて落ち込む。うらやむ。表面上は、SNSとかで優雅な暮らしぶりをバンバン投稿しているが、内実は超寂しい人生を過ごしている。何とか自分を取り繕って、調子のいいふりをする。自分をだます。


こんな経営者、上司の下では誰だって働きたくないですよね。


成功している経営者って、瞬間だけ見ると派手で豪快な人も多いと思いますが、そういう人には語られていない辛い経験をしている人が多いです。過去に痛い思いや、恥ずかしい事をたくさん経験しているはずです。


私も若いころは、何とか自分を良く見せて張り切って毎日を過ごす。実態は、自分という軸がなく、ただ上手くいっているように見て欲しいだけ。。。ただ、私の場合は自分でいうのもなんですが、責任感が強かったので他責ではなく自責の念も強かったと思います。できない自分を許せなかった。幸い、私は人生で最も大きな危機に遭遇した際、自分の力のなさを認めて「恥ずかしい自分をさらけ出してもいいや」と思える事があったので、この状態から抜け出すことができました。



危機を抜け出して気付いた事

このブログでも、講演でも話していますが、「アトツギの鎧を脱げた」、「自然体が最強と気づいた」。


結果、人と仕事をするときは、理屈や言葉だけでなく、「ココロを揺さぶらないとダメ」なんだなという事に気づきました。


特にアトツギ経営者は、プライドも高く、ミスを受け入れられない人が結構います。

そこが、アトツギの弱点。頭は良く、実務もできるが人を動かすことが苦手な人は多い。


これに気づいてからは、部下と話をする言葉遣い、自分の表情も変わっていくことを自分で気付くくらいの変化がありました。プレッシャーはなくなり、失敗したとしても自分一人の力でどうにかするのではなく、みんなの心揺さぶって危機を乗り越えていく。


この構図に気づけたなら、アトツギとしてはGoodです。


理屈で相手を圧倒してもダメ、脅してもダメ。心を揺さぶる必要があるんです。




どうやったら揺さぶれるのか?(基礎編)

1:自分が自然体で過ごし、恥をかくことを恐れないこと。

2:むしろ、恥をかけたことを誇りにおもうこと

3:自分の出来なかったことを正面から受け止めて、できない自分を受け入れる

4:自分の努力だけで克服しようとせず、他の人の力を遠慮なく借りること

5:ずうずうしい思っても、ニコニコしながら頭を下げて、人に遠慮なく頼みごとをする


ここまでは、自分の内面の話です。基本所作として、ここまではできている必要があります。続いて、他人に対して「思いやり」を持つ事。これができるようになるためには、自分が他人から心揺さぶられるような「思いやり」に触れる経験も必要です。


例えば、私の場合は、危機に面した時、学生時代の友人がコロナ禍にも関わらず遠方から会いに来てくれたり、近隣の人でも遠慮しながらも〇〇の話を聞いたけど、大丈夫か?と電話をもらったり、意外と普段やり取りしないような人から、思わぬ事を言われたり、されたりすることがきっかけとなったりしてました。「あー、俺って心配してくれる人が周りにいるんだなー」と。こういう経験があると、今度は、他人に対して「思いやりを持とう」という気持ちになれます。また「出来ない自分の姿を知られてもいいや」と思うようになれるのです。



どうやったら揺さぶれるのか?(テクニック編)











これは、私がやっていた一例なんですが、工場で製造している社員は、夏は40度近い猛暑、冬は暖房もなく極寒の環境で仕事をしています。特に夏場は、溶接など火を使う部署の人たちは過酷で熱中症の危険にさらされながら、黙々と製品を作っています。

工場内を全てエアコン完備はできないので、せめて短時間でも涼をとってもらおうと、真夏に自家製のシャーベットを200個くらい手作りして、工場で働いている人を中心に夏は配っています。


普通に考えると、社員が350名もいる会社の社長が、夏場に仕事もせず、一人黙々とシャーベットを作るってのはおかしな行為ですよね。でも、自分にとってはそれが自然の行動でしたし、働いてくれるみんなのことを思えば、「これしかできないけどゴメンね」という気持ちでやっていました。社員からは「サボってる」と思われていましたが。。。


最初は、社員から「毒入りか?」なんて笑われましたが、みんな私の心を受け止めてくれたと思います。意外においしいと評判で、毎年、ちょっとずつレシピを変えて改良していました。感謝状のような小物までプレゼントしてもらいました。これが一番嬉しかった。。。


こういう事があると、社員のみんなに心が伝わり、何か危機が生じたとき、現場は底力を発揮してくれるようになります。



人生は、良い事も辛い事も同じ数だけやってくる。

普段から、お互いの心を揺さぶる人づきあいをやっていれば、危機に面した時でも明るい顔して乗り切れると思いますし、「他責」という気持ちは出てこないのではないかと思います。






終わり





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